まちのことは、まちのもんに聞け。 博多っ子のすすめ

博多秋博

昔ながらの風情で、「博多」のご先祖様へ想いをつなぐ場所。昔ながらの風情で、「博多」の
ご先祖様へ想いをつなぐ場所。

渡邉桂堂さん

臨済宗大徳寺派 妙楽寺住職
煎茶藤陰流 会長

渡邉桂堂さん

【恵比寿さま】
【恵比寿さま】
戦国時代の兵火をくぐった石や瓦を塗りこめた「博多べい」。恵比寿様が人々の幸せを願う。

15歳で千代町の崇福寺に弟子入り。大学・修行時代は7年間、京都で過ごしましたが、この地で副住職・住職となって38年になります。当寺は鎌倉時代に創建されたのち、二度も焼失しながら、博多のまちの興亡とともに歩んできた歴史が、境内のあちこちに残っています。その証のひとつが、今はお菓子の名前として知られる「ういろう」が室町時代に伝来したことを示す石碑。古くから海外交易がさかんで、中国や朝鮮との縁が深い土地柄であったことを伝えています。また、宿所として寺を提供するだけでなく、みずから渡航した人も多い歴代の住職が眠る『開山堂』や、戦国期の動乱から博多のまちの復興に力を注いだ黒田藩の家臣の面々、江戸時代の豪商・神屋宗湛や伊藤小左衛門の墓碑も然り。その姿は当時のままで、静寂のなかで向き合えば、昔を語る声が聞こえてくるようです。今年で10年目を迎える「博多ライトアップウォーク 博多千年煌夜」では、その歴史や先人に想いを馳せながら、境内を散策ください。頃合いがあえば、桜の真っ赤な紅葉と、銀杏の鮮やかな黄色の対比が美しい自然の造作もご覧になれます。昔ながらの、寺らしい寺の風情を堪能していただけると幸いです。

300年、400年…と、先祖代々の供養に訪れる檀家さんも多い妙楽寺。境内で住職と挨拶を交わす日常は、イベント期間中でも変わらない。参詣の際には、会釈やマナーを忘れずに。

まちの歴史と、博多の人情を今に伝える〝地祭り″が原点。まちの歴史と、博多の人情を
今に伝える〝地祭り″が原点。

冨田勝久さん

御供所まちづくり協議会 相談役
博多の魅力発信会議 議長

冨田勝久さん

【約280年前から続く千灯明】
【約280年前から続く千灯明】
博多部のお寺や路地に鎮座するお不動さま。地蔵堂等で7月後半から8月後半に開催されている。

春の博多どんたく、夏の博多 園山笠に続いて、秋の博多の魅力を発信するのが「博多秋博」。最大のみどころは、博多のまちで受け継がれてきた伝統や文化を、地元の人たちを中心に、情緒や人情もそのままに伝えていることです。たとえば、今年で21回目を迎える「博多灯明ウォッチング」は、私も子どもの頃から馴染んできた博多の地祭り「千灯明」に由来しています。享保の大飢饉で亡くなった方々の弔いを発祥として、博多部の約40程の小さな町内で大切に受け継がれてきたものを残したい、後世に伝えたいという想いから、時代に合わせて、昔は貝殻へ油を注いで火を灯していたのが、素焼きの皿に代わり、ロウソクに代わり…という変遷もありのままです。
個人的には、博多部の入口である「博多千年門」を起点に、寺社が並ぶ博多部の路地を散策しながら、先々で迎える地元の人との出会いも楽しんでいただけると嬉しく思います。古くは神事の後に御神酒を頂く儀式の「直会(なおらい)文化」が今も残る博多は、お互いの胸襟を開くコミュニケーションが盛んです。その温かさや人情もぜひ体験してください。まちのみんなで、お待ちしております。

御供所町では、寺社における3か国語の音声案内の設置や、まち歩きを楽しむための観光メニューの配布(御供所名店会の飲食店舗に設置)を行っている。ぜひ、利用しよう。

人々が継いできたもの、博多の魅力を伝えたい。人々が継いできたもの、
博多の魅力を伝えたい。

梅香さん

博多券番

梅香さん

【かんざし】
【かんざし】
献上道中では、博多帯の美しさとともに、それぞれに季節を表すかんざしもご注目ください。

伝統の博多織の魅力を広く伝えたいと、9年前に「博多献上道中」が始まった当初から、毎年参加させていただいています。博多芸妓にとって正装の黒の紋付を着て、博多献上帯を締めると、気持ちもぴんと引き締まりますね。毎年、多くの方に楽しんでいただいて、芸妓冥利に尽きるばかりです。
私がこの道に入ったのは、18歳のときでした。明治22年に博多で最初の券番が生まれ、全盛期には2000人ともいわれた博多芸妓の伝統を継承するため、初めて一般公募が行われたのです。もともと踊りを習っていたので「有名なお師匠さんに稽古をつけていただける」と知り、一も二もなく応募しました。基本を覚えるだけで3年。半玉から芸妓になっても「その人が出る」といわれる踊りの世界は、日々が精進です。特に秋は、毎年12月に行われる「博多をどり」の稽古で、季節を楽しむ暇もありません。そのぶん、博多献上道中では、お寺さんの銀杏やライトアップされたまちの風情に、うっとりとしています。長年博多で暮らしていても見惚れてしまうほどで、県外の皆様の眼にはどう映るかと誇らしいくらいです。今年も、券番がまちを巡ります。どうぞ、博多の秋の〝粋″をお楽しみください。

現在、17名が在籍する博多券番。昔から、博多芸妓は「大らかできっぷがいい」と評され、芸は年々、艶を増す一方。日本文化PRポスターへの起用で、海外からも注目を集めている。

地域のみんなで作り上げる年に一度の祭りが楽しみ。地域のみんなで作り上げる年に
一度の祭りが楽しみ。

野田敏夫さん

酒泉家 博多 『への字』

野田敏夫さん

【「博多町家」ふるさと館】
【「博多町家」ふるさと館】
おすすめは『「博多町家」ふるさと館』。人力車に乗ってまちを巡るのも気持ちがいいですよ。

生まれてこのかた57年間、冷泉町を離れたことがありません。いちばん留守にしたのは、5泊7日でハワイへ新婚旅行に行ったときくらいです(笑)。ちなみに、冷泉を「れいせん」と呼ぶ人も多いのですが、地元では「れいぜん」。御供所、大浜、奈良屋と並んで、博多部を構成する4地区の一つで、古くから「商人のまち」として発展しました。うちの居酒屋も祖父の代から続く酒店が前身で、路地を歩けば、他にもハンコ屋、鍛冶屋など代々歴史のある店が並びます。小・中学校の統廃合をきっかけに、「はっぱの会」という父親の会を立ち上げて、4地区のみんなで、まちの文化や伝統を受け継ぐ活動も盛んです。秋博にお越しになる方には、ぜひこの「下町らしさ」も楽しんでいただきたいですね。
いまだに私を「トシ坊」と呼ぶ大先輩方から若手まで、地元の人間で準備や運営に関わる「博多灯明ウォッチング」には、博多の人情がギュッと入っていると思います。イベントの後に、飲食店に立ち寄れば、昔ながらの博多弁が飛び交い、県外のお客さんも常連さんも一緒に、山笠や博多談義に花が咲くのも毎年恒例です。私も、カウンター越しになんでも教えますから、気軽に声をかけてください。

ユニークな店名は、山笠の台を支える木材部分「への字」に由来。おひとりさまも大歓迎、料理やお酒はもちろん、「人が好きやけん」と笑う店主の人柄も、博多らしさを感じる店だ。

人々が継いできたもの、博多の魅力を伝えたい。博多の歴史や文化、芸能、祭り
を知ってもらうことが
博多の町おこしの第一歩です。

上田啓蔵さん

西門蒲鉾本店 代表

上田啓蔵さん

【博多春冠】
【博多春冠】
創業102年の老舗蒲鉾店「西門蒲鉾」の蒲鉾は、魚と水と塩にこだわり、一本一本を職人が手打ちした「博多本手打ち蒲鉾」。板付蒲鉾「寿宝」「大寿」「祝扇」をはじめ、祝い事で用いられる「博多春冠」も販売。「海老セロリあられ」「ジャーマンポテトつみれ」「枝豆コーンチーズボール」などといったユニークなネタが揃う天ぷらも、品数豊富。

実はね、博多には2000年の歴史があるんです。例えば、志賀島で発見された金印が漢から贈られたとされるのは西暦57年。弥生時代に朝鮮半島から伝わった水稲耕作技術の跡なんかも残っています。知れば知るほどに面白いのが博多の歴史。マニアックなものも多いですけど、それが通の心を掻き立てるわけですね。博多学の入門編として、まずは寺巡りが面白いと思います。うどんや饅頭、そして山笠の発祥の碑がある「承天寺」。弘法大使が日本で最初に創建した「東長寺」。ういろう伝来の地である「妙楽寺」など、全国へと続く、さまざまな文化のはじまりを見つけることができます。ちなみに、巨大な人魚の骨が保管されてある寺なんてのもあるんですよ。このような、博多の「へぇ~」や「なるほど」を実際に歩いて伝えるのが、10年前から行っている「博多情緒めぐり」です。そして、さらに深く食い込んで博多の歴史や文化、芸能を学べるのが「はかた部ランド協議会」が開催する「博多っ子講座」。研究者や専門家、寺の住職などが、私たちが暮らす町の奥行きを語ってくれるとあって、リピーターの方も多いんです。予習をしてからの町歩きには発見があり、その発見の先に、ロマンを感じる歴史ドラマが広がっていますよ。

人を喜ばせるのが好きだから手を取り合って町を盛り上げます。人を喜ばせるのが好きだから
手を取り合って町を盛り上げます。

正木研次さん

上川端商店街振興組合 専務理事

正木研次さん

【「博多町家」ふるさと館】
【書籍「五十年を駆け抜けた 走る飾り山笠」】
上川端商店街が運営する「八番山笠上川端通 」50周年を祝して作られた記念誌です。古い文献や資料、記録写真や時代の生証人の方々の証言などを元に、上川端商店街の歴史や、八番山笠上川端通の変遷を紹介しています。のほほんとしていながら、儲ける時には儲ける。そんな博多の心に出会う街として上川端商店街を紹介した動画もHPで公開中です。ぜひご覧下さい。

上川端商店街の秋の催しといえば、何と言っても「せいもん払い」。これは明治12年に八尋利兵衛さんが大阪の蛭子祭の誓文払いに倣って始めたもので、「1年間の商いの儲けをはじき出して、お客さんに還元しよう」という、言わばセールの走りです。おもしろいのは、町を上げた“大売り出し祭り”にしたこと。この賑わいが評判になり、全国からこぞって人が押し寄せたそうです。サービス精神を惜しまず、手を取り合ってお客さんの笑顔を引き寄せる。そんな心意気は、今なお博多の商人に引き継がれていると思います。
 まぁ博多には、“喜んでもらいたい気質”の人が多いんでしょうね(笑)。だから祭り好き。今秋は上川端商店街でも「オクトーバーフェスト」「ホークス優勝セール」「きのこ大祭」と、催しが目白押しです。特に初開催の「きのこ大祭」は、きのこ研究者や料理人、きのこグッズデザイナーなど、きのこに関わる人が全国から集結するユニークなイベントですよ。そして「博多献上道中」の時には、今年一新した商店街の街灯が、風情豊かに博多献上織姿の女性たちを照らします。また、1200年前から伝わる「博多おくんち」では、五穀豊穣を願って御神幸パレードが町を練り歩きますので、ぜひ一度、足を運んでください。

私たちは博多の案内番。町の活気も盛り上げます。私たちは博多の案内番。
町の活気も盛り上げます。

池田陽子さん

博多町家ふるさと館
事務局次長

池田陽子さん

【博多曲物 ぽっぽ膳】
【博多曲物 ぽっぽ膳】
「博多町家ふるさと館』のみやげ処では、「博多織」「博多人形」「博多鋏」「博多張子」「博多独楽」などの博多伝統工芸品を販売しています。池田さんが選んでくれたのは見た目も愛らしい「博多曲物」の「ぽっぽ膳」。博多では子どもが3歳になると「お膳すわりの祝い」が行われ、はじめて自分の膳が与えられるという。

「博多町家ふるさと館」は、明治や大正の博多の人の暮らしと文化を今に伝える目的で誕生し、今年で20周年を迎えました。博多の町家を移築した「町家棟」を中心に、博多の歴史と文化に関する展示を行う「展示棟」、博多の伝統工芸品や山笠グッズ、地元銘菓などを販売する「みやげ処」の3棟で構成。博多伝統工芸を次の世代に繋ぐべく、伝統工芸の実演も行っています。ここには地元を愛して止まない博多っ子たちが集い、博多に惹かれた人が全国津々浦々から見学に訪れ、この町の暮らしの歴史に関心を寄せる海外のお客さんも多く足を運んでくださっています。今も昔も、人が行き交う町。それが博多の一番の魅力なんでしょうね。秋博の時期には、その交流もより活発になります。当館では江戸時代に櫛田神社に存在した、博多町人による町人のための図書館「櫛田文庫」の展示会をはじめ、灯明ウォッチングでも博多の町に彩りを添えるお手伝いをします。また、ライトアップウォークでは、格段にスケールアップした演出で櫛田参道を華やかに盛り上げる計画を練っていますので、お楽しみに。博多の町歩きの案内口としても気軽にご活用くださいね。

山笠の息づく博多の秋は、路地の魅力や人にも注目。山笠の息づく博多の秋は、
路地の魅力や人にも注目。

田中龍也さん

MateriaL

田中龍也さん

【まちを彩る灯明】
【まちを彩る灯明】
全国から「ここでしかシャツを作らない」と豪語するお客さんも数多く訪れるアトリエ兼店舗から、秋博の時期には灯明のあかりがみえるそう。「今年、行ってみたいのはライトアップウォーク。普段と違う風情は地元在住でも楽しみです」。

日田で生まれ、高校進学と同時に福岡で暮らし始め、自分のブランドを立ち上げて12年。デザインを描いたり、生地やボタンを仕入れたり、縫製の仕上げをしたり…。忙しく過ぎる日々ですが、朝、寿橋を渡る風が冷たくなって、中洲の川沿いに灯明が並ぶと「今年も秋がきた」と感じます。以前、毎年、博多祇園山笠に出ている私の友人が、後輩を連れて灯明を設置している姿を見ました。熱い山笠文化のまちで「地元を盛り上げよう」という思いの強さ、人の絆の深さを感じましたね。また、中洲は私の仕事場ですが、昼食に出ると、路地に知られざる名店が多いのにびっくり!大通りから一歩入るだけで、昔ながらの個人商店も並ぶんです。うちで刺繍をお願いしている職人さんをはじめ、店主に気さくできっぷのいい方が多いのも中洲らしいと思います。懐かしい匂いがするので、散歩するのも楽しいですね。そういえば、このビルの1階にある美容室も歴史が古く、料亭の女将さんらしき方がきれいに髪を整えていかれる姿を見かけます。近くの焼鳥屋の大将も、店ではTシャツ姿ですが、街でみかけるとハットにジャケットを着て、ビシッと決めていらっしゃる(笑)。そういう粋なところも、まちの魅力だと思います。

文化の発信となったものに包まれて生活している贅沢。文化の発信となったものに
包まれて生活している贅沢。

松本真由美さん

ホテルオークラ福岡
コンシェルジュ 係長

松本真由美さん

【櫛田神社のあっかんべ~をする風神】
【櫛田神社のあっかんべ~をする風神】
拝殿の装飾を見上げると、右上に「あっかんべ~」姿の風神が!「ユーモラスな博多っ子気質を表しているそうです。探してみてください」。散策の後は、ホテルの「ラウンジ&バー ハカタガワ」へ。クラフトビール「博多ドラフト」で喉を潤したり、注文を受けてから1杯ずつ心を込めて淹れるハンドドリップコーヒーをご堪能あれ。

毎年、国内・海外から多くのお客様をお迎えしています。観光目的はもちろん、学会等のビジネスでお越しの方も多く「空いた2~3時間で楽しめる所はないか」というお問合せが数多くあります。歴史や文化を好まれる方には、櫛田神社から博多町家ふるさと館への博多情緒あふれるエリアをよくご紹介しますが、御供所エリアでは、居住空間と寺社仏閣が混在している点に感銘を受けるようです。
博多秋博は、地元の方にとっても、見慣れた景色に踏み込み、博多の魅力を再認識する機会です。千年門をくぐって承天寺通りに立つと、寺社の木々の先にビル群が見えて博多の今と昔を感じます。文化の発信となった寺院が、現代の生活の中に当たり前に存在し、それに囲まれて生活している贅沢も感じます。 
そういえば、海外からのお客様に英語表記の商品がある伝統のお茶屋さんをご紹介した際、「人情厚く出迎えて頂いたのに、博多弁をiPadの翻訳アプリで翻訳できなかった」なんて笑い話もありました。また、秋博の期間とご存じでなかった方々は、イベントをサプライズのように喜ばれています。この時期ならではの出会いや感動にふれて頂けるように、今年も心を込めてご案内したいと思っています。

ご縁を「粋」に結んで博多から、全国へ発信。ご縁を「粋」に結んで
博多から、全国へ発信。

長澤宏美さん

有限会社ながさわ結納店
博多水引デザイナー

長澤宏美さん

【まちを彩る灯明】
【博多水引のリング(税抜500円~)】
贈り物に、そっと想いを添えるオリジナルのリング。日本酒やワインのボトルに掛ければ「幸せを飲む」という縁起物に!博多では、ボトルキープに使って、接待のおもてなしにされる男性も多いのだとか。贈る物との組み合わせを考えるのも楽しい豊富な柄とカラー、一つひとつ、職人の手で丁寧に作られる質の良さも人気です。

秋博といえば、幻想的なライトアップやイベントが楽しみですよね。博多の歴史や文化にふれる機会に、ぜひ一緒にご覧いただきたいのが「博多水引」です。水引というと結納品のイメージが強い方も多いのですが、昔から『真心を結び、ご縁を結ぶ』『浄化して、運気を結び入れる』という意味があります。素敵な日本の文化を、もっと身近なかたちで広めたくて、いろいろな商品に挑戦しています。
ちなみに、「博多水引」はねじりをキュッと締めるのが特徴とご存知ですか?博多祇園山笠に象徴される〝粋″やエネルギッシュさを表現しているんです。梅の花も、平坦ではなくキリッと立体的につくります。東京・日本橋で展示会を開いたら、入って来られた途端に「うわー、カッコいい!」「さすが博多ね」と感動されて、とても嬉しかったです。昨年は、神戸ビーフをヨーロッパへ初めて輸出する時のお土産に、和紙にくるんでドイツの国旗の3色の博多水引を結んだパッケージを使っていただいたんですよ。伝統の継承には発信力も大切なので、私もSNSを活用して、一時はヨーロッパ時間にあわせてUPしていました(笑)。「博多水引」を通して、たくさんの方の出会いやご縁を結んでいけたら幸せです。

手づくり職人の技にふれ、今に息づく遊び心に注目を。手づくり職人の技にふれ、
今に息づく遊び心に注目を。

八田美穂子さん

はかた伝統工芸館 主任

八田美穂子さん

【福の神】
【福の神】
はかた伝統工芸館の2階。さまざまな博多の伝統工芸品の歴史や新作の展示が並ぶなかで、ひときわ目を惹くのが、博多人形の『福の神』。献上柄の博多織のタペストリーを前に、福々しい笑顔で訪れる人の心をパッと明るくします。「地元では、パワースポットとしても人気です。どうぞ会いにきてください」。

ふらりと立ち寄って、伝統工芸の世界を楽しんでいただけるのが『はかた伝統工芸館』です。「博多織」や「博多人形」をはじめ、今も暮らしに息づくさまざまな伝統工芸品をご紹介しています。たとえば、「博多鋏」。700年も前に宋から博多に伝わったもので、それを博多の刀鍛冶師がつくり、世に出したのが始まり、といわれているんですよ。
 また、工芸品には「その土地が出る」といわれます。おなじみの「博多張子」は、だるまに松竹梅を描き、金粉をちりばめるのが〝商人のまち・博多″らしく、縁起ものとして親しまれています。人気の「博多曲物」も、杉を使い、塗りで仕上げずに性質と香りを生かして、ごはんを美味しくいただく仕様は博多ならでは。あちこちに、職人の意気を感じるのも面白いですね。
今年も秋博では、スタンプラリーや企画展示に加えて、大好評の秋まつり「博多商店」を開催!「博多人形」や「博多織」をはじめ手職人の工芸品づくりが体験できるコーナーやグルメコーナー、博多のごりょんさん特製の「かしわめし」(お吸い物・野菜のロシア漬け・おしんこ付で600円)が登場します。山笠で男衆を送り出す時につくる博多の味を、ぜひお楽しみください。

博多っ子気質あふれるこの町で、暮らしと伝統文化をつなぐ場をつくりたい。博多っ子気質あふれるこの町で、暮らしと伝統文化をつなぐ場をつくりたい。

相馬夕輝さん

D&DEPARTMENT株式会社 代表取締役社長

相馬夕輝さん

【福の神】
【d47】
福岡店や写真のd47(東京都渋谷区)など、国内外に12店(2015年10月現在)を展開するD&DEPARTMENT。福岡店では現在「福岡の書店員が選んだ激オシ文庫フェア」を開催中(~11月22日(日))。「ワンクmeets博多人形~111匹のワンク展 with GROOVISIONS」(10月29日(木)~11月17日(火))の会場にもなっている。「“デザインの公民館”的存在を目指して活動を広げたいですね」と相馬さん。

秋の博多で行きつけのお店を訪ねると、大相撲九州場所の番付表が貼られているんですね。それを眺めながらカウンターでおでんをつまみ酒を楽しむ、このひとときが大好きです。2013年11月に承天寺そばにオープンした「D&DEPARTMENT FUKUOKA」は、この秋に2周年を迎えます。ウェルカムでもてなし好き、誰とでも打ち解けてすんなり仲間に入れてくれる、そんな博多っ子の気質に支えられての2年間でした。若八幡宮の厄除にいらっしゃった方々が立ち寄ってくださったり、博多祇園山笠の頃になると水法被に締め込み姿のお客さまがお食事なさっていたり、博多ならではの光景を当店でも目にするようになり嬉しく思います。今年は山笠の東流に当店スタッフも参加させていただき、地域の方々と一緒に山を舁きました。準備期間から数ヶ月にわたる貴重な経験に、山笠が終わった後はすっかり放心状態になってしまったスタッフもいましたね(笑)。祭りがあり、町を見守るお寺や神社があり、伝統工芸が受け継がれるこの地で、私たちも博多の文化を発信するきっかけをつくっていきたいと思っています。ビジネスホテルとオフィスばかりが増えるのではもったいない町ですよね。

※D&DEPARTMENT FUKUOKAは、2018年10月28日をもって、リニューアルに伴う移転のため、一時閉店中